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福祉施設の労務管理

福祉施設の労務管理

labor management

変形労働時間制

Q1当施設は早番・遅番・夜勤のシフトを組んでいますが、変形労働時間の届出はどうすればいいのでしょうか?
A1 1年間の就業日が決まっている場合は、1年単位の変形労働時間制をとりますが、老人ホームのような交代勤務のある施設では、年間の就業日を決めることは不可能です。毎月シフトを組んでいる場合は、1ヶ月単位の変形労働時間制をとるのがいいでしょう。1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する場合、就業規則にその旨を定めて一度監督署に届けてしまえば、労使協定の締結は不要です。(1年変形は毎年届出が必要です。) 導入することで、1ヶ月の変形期間を平均して1週間の労働時間が40時間を超えなければ、特定の日や週に法定労働時間を超えて労働させることができます。但し、1日の勤務時間が8時間を超えた場合は時間外手当を支給しなければなりません。

残業か否かの線引き

Q2当施設は昨年、労働基準監督署の立ち入り調査が入り、3ヶ月分の未払残業代を支払いました。タイムカードの打刻通りの時間を残業代として支払うよう指導されましたが、今後の改善に関し、どのような点に注意すればいいですか?
A2 労働基準監督署の立ち入り調査は定期的に行われています。特に福祉施設は報告書作成(時間外労働)や利用者とのコミュニケーション(未線引)、自己のスキルアップの勉強(非労働)など、残業か否かの線引きが大変難しいので、調査が入った場合、基本的にはタイムカードの打刻の時間すべてが残業に当たると指摘されます。 日頃から取り組むべき労働時間管理のポイントとしては、 ① 就業時間内にできなかった報告書の作成は残業として認めるなど、施設内でどこまでが残業に当たるのかを明確にする。 ② タイムカードは各フロアに設置し、職員には仕事終了後すぐに打刻する習慣をつけてもらう。 ③ 実際の終業時間からタイムカード打刻までの時間にはっきりとした差がある場合には、何をしていたかを毎回記録する。 私たちは、お客様の施設に対し、常に以上のようなご提案をしています。労働か否かの線引きをあいまいにしておくと、当局からの未払い残業代の指摘を受けても仕方ありません。記憶に新しいところでは、2003年には特別養護老人ホームの経営者が労働基準法違反(割増賃金不払い)容疑で逮捕されるという事件の報道がありました。労働基準監督署の立ち入り調査はいつ行われるかはわかりません。しかしながら監督署に対する策という観点からではなく、誰の目から見ても明確で誤解の余地のない労働時間管理は、労使間の紛争予防として極めて大切なことです。専門の社会保険労務士に相談の上、早期のお取り組みが必要です。

勤怠不良の職員への対処法

Q3当施設に毎週1回以上遅刻や欠勤をする職員がいます。他の職員との関係もうまくいっておらず、解雇したいと考えていますが可能でしょうか?
A3 労働者は労働契約に従って、使用者に労務を供給しなければなりません。就業時間を遵守しないのは、この労務を供給しないことであって、労働者の基本的義務を怠るものとして、懲戒処分の対象となります。では、このような勤怠不良という事実だけで労働者を解雇することができるでしょうか。判例では、勤怠不良という事実があるだけではなく、就業に関する規律に反したり職場秩序を乱したと認められる場合においてはじめて懲戒解雇の事由になると解されています。 では解雇権の行使に先立って注意すべき点は・・・ ①書面で注意をするなど段階を踏むことなくいきなり懲戒解雇に付することは無効とする判例もありますので、まずは勤怠不良が2回以上あったら、書面で注意をしておきましょう。口頭だけの注意ではなく、必ず書面で行うことが必須です。 ②懲戒解雇をする前に、軽めの懲戒をしておくことも重要です。軽めの処分をしておかなかったことが、解雇無効の重要な理由になった判例もあります。 ただし、このような対策をとっていたからといって、もめることなく解雇できるとは限りません。判例では、使用者の懲戒解雇権を制限していますので、解雇の行使には極めて慎重な配慮が必要になります。
               

有給休暇の時間単位付与

Q4業務上、どうしても不規則な勤務時間になりがちではありますが、有給休暇は時間単位で付与しなくてはならないのでしょうか? その他、福祉施設が注意すべき点を教えて下さい。
A4 平成22年改正後の労働基準法では、年に5日を限度として、年次有給休暇を時間単位で、「付与することができる」ようになりました。時間単位の付与が義務化されたわけではありません。時間単位の付与を制度として導入する際に、ご留意頂く点は次の通りです。 例)通常勤務が9:00~18:00(所定労働時間8時間+休憩1時間)で、下記のような勤務実態があった場合 9:00~12:00(有給休暇)→13:00~18:00(勤務)→1時間休憩→19:00~22:00(時間外勤務) ※ 8時間以内なので割増分は不要 尚、福祉施設は分類上「サービス業」に相当し、資本金(または出資総額)が5,000万円以上、かつ、常時労働者数が100人超になってしまうと、「1か月60時間を超える時間外労働が50%の法定割増賃金率を猶予される中小企業」の枠から外れてしまいますので、合わせてご注意下さい。